にんにくガーリック

元気に小説を書きます。水曜日のお昼ごろ更新の予定。このブログの内容は、特別な記載がない限りフィクションです。

『悪魔の予言』

『悪魔の予言』 旅立ちから三日続けて、鳥人の運び屋を乗り継ぎ、宿場に着いたら眠る生活を繰り返した。のど袋の臭いを除いて苦のない旅路だ。一般の建物と比べてシャワー室が充実しているのは、同じような旅人のためかもしれない。 下を見ると山や大河を越…

『ラム酒を一杯』

『ラム酒を一杯』 成人してからもお酒を飲んだことがないと気づいた。 山本弘樹は二十一歳の誕生日を迎えた。珍しく親戚と集まる機会があり、会う機会の少ない遠い親族からはもう成人かと毎回似たような話をされた。やがてどんな酒が好きかと訊かれて、そう…

来週の予告

次回からから更新を水曜日にします。 このごろ生活習慣の都合により、 水曜日や木曜日に調子が悪くなりやすいので、 眺めるだけの日にしやすくするためです。 次週、『ラム酒を一杯』 恋愛ものを急に書きたくなりました。 ご安心ください、ちゃんと一組以上…

『ヒーロー・スクール』

『ヒーロー・スクール』 散歩の途中で少年たちの声が聞こえた。 歓声に似ていたが、すぐに落胆に近いと気づいた。なにやら心配するような声色が遠くまで届いた。首を彼らのほうに向けると、きつめに巻いたマフラーが髪を引いた。首だけでは足りず、身体ごと…

来週の予告

あらすじ 一頭の異形の怪物が現れた。 世界各地を無差別に訪れ、歩いて建物を破壊し、半日程度で霧のように消えてゆく。会話を試みるような素ぶりがあるが、その言葉は誰にも理解できず、辛うじて聞き取られた鳴き声からザリーシャと呼ばれるようになった。 …

『懺悔の螺旋階段』

林の奥にある塔の噂を耳に挟んだ。石と木と少しの鉄でできた塔の中には螺旋階段だけがあり、窓のない暗闇が高くまで伸びるという。中は夏でも涼しく、冬でも暖かく、まるで別世界のようだと言われていた。 何のために建てられたのかは全くわからない。流れる…

来週の予告

大学の裏手、林の奥に石造りの塔があった。中にあるのは螺旋階段とそれを支える柱だけで、特別な施設は見当たらない。 にも関わらず、この場を訪れる者たちがいた。彼らは塔の中で人知れず、かつて抱えた罪を独白する。入り口の他に窓や扉のない、光は小さな…

『グッバイ・マイ・エンジェル』

『グッバイ・マイ・エンジェル』 扉を丁寧に開けて一人の顔が入った。白かった服には黄ばみと所々の解れが見え、髪を精一杯に整えたが傷や古い汚れを隠しきれていない。見るからに貧乏か、そう見せたいような姿だ。この部屋に似たような身なりの者が来ること…

来週の予告あらすじ

傭兵の斡旋所に様々な依頼が寄せられ、多様な出自の者が日銭を稼ぐ。猫を探して、盗まれた指輪を奪い返して、同業他社の輸送車を妨害して。 ある日そこに訪れた少女・レグネーベルは登録試験も兼ねた依頼を受け、予想外の手早さを見せた。宿舎に入る前の暮ら…

おしらせ

おしらせ 今週と来週はおやすみします。活動と風呂敷をうっかり広げすぎて、文章にまとめる時間が不足したためです。最終回はまだまだ先です。 チャットストーリーの宣伝pixivチャットストーリーをはじめそうです。https://chatstory.pixiv.net/users/1169こ…

『イニストラードを覆う百合の隆盛 3』

『イニストラードを覆う百合の隆盛 3』 潮風に煽られ買ったばかりのストールが飛ばされた。海にほど近い道からうっかり落ちれば拾う術はない。この身では浸透圧に耐えられないのだ。草の茂る土から離れ、慣れない岩肌を踏みしめた。幸いにも小岩の窪みに引っ…

『危ないオバサン 3』

『危ないオバサン 3』 脈々と受け継いできた秘術により、見事ドラゴン・オバサンの撃退に成功した。表彰式を行う埼玉県川越市から遠く離れた福井県鯖江市にて、ガンリキ・オバサンがすべてを見ていた。かつてない遠距離からの狙撃は場所の特定を困難とし、防…

二次創作『イニストラードを覆う百合の隆盛 2』

『イニストラードを覆う百合の隆盛 2』 このごろ悪い夢を見る。大切な人と身を寄せあう所に、誰かが武器を構えて襲ってくる夢だ。町のゴシップ屋によると実はいいことが起こる兆候らしいが、そういったいいことは起きていない。 何より私は孤立していた。同…

二次創作『イニストラードを覆う百合の隆盛 1』

スレイベンの町外れにある小屋には歳若い吸血鬼が住んでいると言われている。賢明な多くの者は近寄るどころか目を向けさえしなかった。元々がひっそりした場所であり、誰かが困るわけでもないので、噂話の他には誰も気に留めず、求めていた事情と合致した。 …

『恐怖!猿を落とす木!』

『恐怖!猿を落とす木!』 ここ数週間で聞くようになったニュースがある。猿が現れ、通行人を襲うらしい。特に子供と女性を狙うようで、武器を持つなどの対策を怠らないように。 一体どこから現れたのか。いままで猿がいなかった地域に、誰かが持ち込んだの…

『危ないオバサン 2』

『危ないオバサン 2』 あらすじ飯能軍の活躍により、全身弾力性のバウンディング・オバサンは撃破された。しかしそれを皮切りに、新たなオバサンが目覚めてしまった。毎月15日の埼玉デパートでは相変わらずバーゲンセールをしている。その場に現れ、天空から…

百合『スマート・ペアリング』

登場人物紹介亀有 枢子 (かめあり・すうこ)ゆったりした服装を好む。喧嘩になっても近くに来ると空気が和らぐ、俗に言うムード・メイカー休日はよく土地巡り(さんぽ)をする。IQは127 有川 墨芽 (ありかわ・すみめ)ビシッと決めた服装を好む。パンツスーツや…

二次創作『オラクル教団の日記』

二次創作『オラクル教団の日記』 指導者を失った教団が崩壊し、辛うじて繋ぎ止めた者らを率い、あてのない放浪をしていた。物資も底をつきかけ、商店がなくては財の無用さがのしかかる。 かつてはこの地に街があったものだ。教団を憎む無法者が暴れまわった…

『正義の海域フジツボシャーク』

『正義の海域フジツボシャーク』 豪華客船への招待状を送った。もちろん本命はこの中の1通だ。 サークルで世話になったあの子と運命的にロマンチックな再会をする、これが果たすべき使命なのだ。 表向きには姉の結婚式としている。しかしそのついでに、同窓…

『隣の遠景見聞録』

『隣の遠景見聞録』 今回の主な登場人物・タマエモンザブロウ:ねこ・男性・月宮巳甘:ムカデ人間・女性・森下結衣:グール・女性 たまえ・1 土を破り出づる白と茶に輝く毛並みが立ち上がった。 スラリ長い四肢を獅子のごとく誇るその名はタマエモンザブロウ…

『エスカレーターを歩いた奴は死刑』

『エスカレーターを歩いた奴は死刑』 コウサクはコールド・スリープから目覚めた。予定通りの2037年、この時代ならば治療技術も確立しているだろう。自力で氷山を降り、都市を探した。恐竜が見当たらないためか、歩きやすい道のりだった。 コウサクの目に飛…

2306字『危ないオバサン』

『危ないオバサン』 今月もバーゲン・セールが始まった。埼玉デパートが誇る世界最大の駐車場都市はワゴン車で埋め尽くされ、各地から集まったオバサンが睨み合っている。今年はデパート側も想定外の、熱線による無差別爆撃がある。これを生き残るため、本来…

『続 働かざるもの食うべからず』

『続 働かざるもの食うべからず』 前回http://tamanegionion.hatenablog.jp/entry/2018/08/03/135836 ムカデ人間の社長・月宮巳甘は歩きながら物思いに耽っていた。社員を取り巻く状況はすでに順調で、ここからさらに上を目指すには。散歩コースからひとつ隣…

『3次創作 アークライト教授の部屋』

『3次創作 アークライト教授の部屋』 律儀な3回ノックでドアが開いた「失礼します、アークライト教授」句点まで打って手を休め、顔をあげた。「俺の研究室に何の用かな?」「はじめまして、私はソフタ・イフカイノといいます」教授の返事は素っ気ないものだ…

『美女とモルディギアン』

行列を尻目に関係者口を通った。森下結衣は控え室へと向かう。胸を張って、道の真ん中を堂々と。駆け出しだろうと、心は一流のベテランのつもりでやれ。先生の教えをよく守っている。 ノックして扉を開けた。空いた椅子が多く、荷物もない。演者らしき者は2…

『働かざる者食うべからず』

『働かざる者食うべからず』 新しい社訓は「働かざるもの食うべからず」だ。入社と同時に社長が変わったので、去年までに調べた内容が一気に覆った。何が起こるか考えたくもない。しかしいきなり転職活動をする勇気があるわけでもない。やってみて、厳しかっ…

『脱いだらすごいんです 2』

『脱いだらすごいんです』 高嶺の花だと思っていた彼女と隣の席になってしまった。皆はビールや日本酒を注文する中、彼女は恥ずかしそうにウーロン茶を頼んだ。お酒が苦手でもいいんだと言い合う中、僕は悪いことをしているような気がした。無理して飲みの席…

『ダチョウ人間を討て!』

『ダチョウ人間を討て!』 表彰台を頂まで登る感覚が全身に焼き付いている。滴る汗も、筋肉を揺さぶるリン酸も、すべてを忘れて勝利に酔い痴れた日。1ヶ月が過ぎても、2ヶ月が過ぎても、部屋に戻ると思い出す。 それ故に、底なしの怒りが沸きあがる。大規模…

『ゴゴゴゴンベエ』4話 (4/4) 完

『ゴゴゴゴンベエ』4話 (4/4) 教室は噂で溢れていた。ゴンベエが着く頃には、すでに結論が囁かれていた。「机が増えてるってことは転校生じゃないかな」「他の教室には特になかったし」 噂はその通り、朝一番での話は転校生の紹介となった。夏休みの直前に、…

『ゴゴゴゴンベエ』3話 (3/4)

『ゴゴゴゴンベエ』3話 (3/4) ゴンベエはこう見えて思慮深い性格をしている。つい先日、歳上の無礼者がいることを知った。身近な年長者は丁寧な人ばかりだったので、テレビの外にもそんな人がいるのだと知った。そうなれば、マスク人間のような奴が他にもい…