にんにくガーリック

元気に小説を書きます。水曜日のお昼ごろ更新の予定。このブログの内容は、特別な記載がない限りフィクションです。

来週の予告

 大学の裏手、林の奥に石造りの塔があった。中にあるのは螺旋階段とそれを支える柱だけで、特別な施設は見当たらない。

 にも関わらず、この場を訪れる者たちがいた。彼らは塔の中で人知れず、かつて抱えた罪を独白する。入り口の他に窓や扉のない、光は小さな隙間から射す頼りない日光だけの空間が、彼らの罪を飲み込んでゆく。複数の人が同時に入ったらどうなるのだろう。誰もその答えを持っていなかった。中で聞こえた音は自身の声と足音、そして軋むような音だけだった。暗闇でも近くならば見えるだろうと思った好奇心旺盛な若者たちも、二人目は入る一歩を踏み出せなかった。

 いつしか塔への関心は薄れ、都市伝説に懺悔部屋として残るのみとなった。本気で懺悔をする者のみが訪れるようになり、他の不思議は気にも留められなくなった。

 初夏のある日、新入生・辻村武志が訪れた。過去の罪を悔い、誰かが同じ過ちをする前に気づく場を作るべく入学した。似た理由を持つ医学部仲間からこの塔の噂を聞き、夏季休業の始まりに、改めて心境をまとめることにした。

 塔の中で語りかける声があった。初めて自身以外の声を聞いた者になった。姿の見えない、男とも女ともつかない声の主は辻村を知っていた。そして──

 彼にのみ建てられた理由が告げられるのだった。

 


次週

『懺悔の螺旋階段』

お楽しみに。