にんにくガーリック

元気に小説を書きます。水曜日のお昼ごろ更新の予定。このブログの内容は、特別な記載がない限りフィクションです。

『ゴゴゴゴンベエ』3話 (3/4)

『ゴゴゴゴンベエ』3話 (3/4)

 


 ゴンベエはこう見えて思慮深い性格をしている。
つい先日、歳上の無礼者がいることを知った。
身近な年長者は丁寧な人ばかりだったので、テレビの外にもそんな人がいるのだと知った。
そうなれば、マスク人間のような奴が他にもいるかもしれない。
そればかりか自分だって、気づかないまま第2のマスク人間になることだってあり得る。
もしもそうなったら、気分を悪くするのは友人だ。
自分の味わった嫌悪を噛み締めた。


 答えが出ないままでローリングCに到着した。
「やあゴンベエくん、いらっしゃい」
店長は今日も優しく出迎えてくれる。
店長に相談したら、何かヒントをもらえるだろうか。
行動を待つべき理由はなかった。

「なるほど、そういうことなら」
店長はゲームスペースに座る人に声をかけてきた。
「先生がいたので、今のゲームの後で話してくれるそうだよ」


 席へ向かうと、ちょうど片付け終わった所だった。
「こんにちはゴンベエくん。
僕は志津ソウタ。
学校では見かけても覚えてないかな」

「え、学校にいるんですか?」

「月の部屋ってあるんだけど、3年生だし、
多分3階に行く機会がなくて気づかなかったのかな。
そこで悩みがある子の相談に乗ったり、
あとは毎週水曜日のお昼休みは解放してるよ」

上の階には音楽室、下の階には理科室があるあたりに行けば会える先生と、
カード屋さんでも会えると聞き、
ゴンベエの交友の輪がまたもや広がった。
これもきっかけは2018年6月23日発売の『デュエル・マスターズTCG拡張パック双極編2弾 逆襲のギャラクシー卍・獄・殺!』のおかげだ。
これまでのスピードを超えた超高速戦略を可能にする《"轟轟轟"ブランド》がもし無ければ、
新しい友達と出会うきっかけも無かったかもしれない。
ゴンベエは人知れず、新しい相棒の《轟轟轟》に感謝した。

 ゴンベエはマナーの基準だけを教わった。
詳しい内容は多岐に渡るので、
さわりを教えたのだ。

マナーは簡単な行動だけで自分と相手に利益があること。
マナー関連のトラブルは、カッコいいと思ってやった内容で起こりやすいこと。

ゴンベエとソウタ先生は交流こそなかったものの、
集会や行事の度にゴンベエを中心にしっかりまとまった行動が印象に残り、
中心だけ言っておけば大丈夫だと思ったのだ。

「あとは実践にしてみよう」
「実践って?」
「そりゃ決まっているだろう、こいつだよ」

「デュエマ・スタート!」

「おっと早速だけど、シールドはすべて離れさせて置くほうがいい。
こうすればこっそり枚数をごまかすとかの、イカサマをしにくい状態になる。
信用してもらう方法のひとつだね」

「なるほど、そうします」
ゴンベエは枚数が見える程度にずらして重ねていたシールドを広げた。
テーブルを横に広く使うものの、
ここローリングCではまだまだ隣の邪魔にはならない。

「僕から、マナチャージをしてターンおわりだ」
《時の法皇 ミラダンテXII》をタップインした。
ここまでのゲーム自体はマスク人間と同じなのに、
柔らかな物腰は安心してゲームを進められる。

「マナチャージして《ホップチュリス》を召喚、ターン終了」

「アンタップしてドロー。
今回もタップインだけでターンおわりだ」


「ドローしてマナチャージ」
ゴンベエは引いたカードを見て、つい口元が緩む。

「《轟車"G-突"》を召喚してから、
《ニクジールブッシャー》をコストなしで召喚してこれで手札1枚、
《"轟轟轟"ブランド》をコストなしで召喚!」

「おお、これはすごい」
実は、ただの一言でゴンベエは遠慮なく動ける。
自分ばかり行動すると、相手に退屈させやしないかと心配になりがちだった。

「《轟轟轟》で攻撃して、
そのあと《ホップチュリス》も攻撃!」

「おっと、3枚目から《ドラゴンズサイン》が出た。
手札の《龍装の調べ 初不》を出して、次のアンタップを封じるよ」

「アンタップしてドロー、アンタップインをして、《コアクアンのおつかい》だ。
3枚を見せて、すべて手札に入れる」
見せた3枚は先生の手元に、しばらく表のままで置いた。

「《初不》で《轟轟轟》に攻撃するときに革命チェンジをする。
そして《ミラダンテXII》を出した時にファイナル革命能力と、
呪文を唱える効果で《ジャミングチャフ》を使う。
このふたつで呪文全部と、コスト7以下のクリーチャーを封じるよ」

「ドロー、それで‥‥」
手札とゴンベエのにらめっこはすぐに終わった。
「動けるのは《ブッシャー》だけだから、
えーと‥‥マナチャージもなしでこのまま攻撃」

「わかった。トリガーは‥‥無しだったよ」

「アンタップしてドロー、タップインして2マナで《スパイラルゲート》を使おう。
《ニクジールブッシャー》を手札に戻してもらうよ」

「そして‥‥《ミラダンテXII》でプレイヤーへ攻撃しよう。その時に革命チェンジだ」
同じ内容のカード2枚を入れ替えてた。

「さっきと同じ《ミラダンテXII》を出した時にファイナル革命能力と、
呪文を唱える効果で《ジャミングチャフ》を使う。
呪文全部と、コスト7以下のクリーチャーを封じるよ」

続ける前に、ゴンベエはひとつ疑問を口にする。
「もう能力を知ってる相手にも、毎回言うんですか?」

「そうだね」
ソウタは優しく語った。
「何をするか見えない能力は、ちゃんと言わないと忘れてしまうかもしれない。
それに人間の思考は耳を使うと理解しやすくなるんだ」
うっかりミスを誘いたいのではない、
と強調した。

「ドロー。このターンは呪文と7以下のクリーチャーが使えなくて、
《ホップチュリス》は最初の攻撃はできないから‥‥」

ゴンベエは悔しい半分、感心半分だ。
派手なカードの連打ではなく、
少しの動きで防がれている。

「また何もできないから、ターン終了」

 


「アンタップしてドロー」
ソウタ先生はゴンベエの顔色を見た。
行動できないターンが続くと、
そろそろげんなりしても珍しくはない。

「ここで確実かつ手短に決めよう。
アンタップインして5マナの《ドラゴンズサイン》だ。
《ミラクルスター》を出して《ジャミングチャフ》を手札に戻すよ。
そして3度目の《ミラダンテXII》の革命チェンジだ。
《ジャミングチャフ》とファイナル革命で、
使えるのはシールドトリガーもコスト8以上のクリーチャーだけだ」


あと一撃まで追い詰めたものの、
ソウタ先生のデッキはこれを想定したもので、
ゴンベエの完敗だった。

「ありがとうございました。完敗です」
「ありがとうございました。噛み合いに助けられたよ」

「もう一回やりましょう! 次こそ勝ちます!」
「そうだね、僕もギリギリだった」

 こうしてゴンベエの世界は今週も広がっていった。