にんにくガーリック

元気に小説を書きます。金曜日のお昼ごろ更新の予定。このブログの内容は、特別な記載がない限りフィクションです。

正義の炎弾 フジツボルケーノ咆哮

『正義の炎弾 フジツボルケーノ咆哮』

 フジツボたちが炎を吐いた。海中でも構わず燃えさかる炎が、かつての天敵イボニシを料理する。

フジツボは元々、移動を伴わずに生殖相手に届くため、
大海原でも名の知れる長い生殖器を持っている。
その隣にもう1本2本と炎弾発射口を伸ばし、
燃料を喰らい、遠くの餌まで撃ち落とす。
炎弾の影響は水の流れ方にも届き、
新しい餌を手元まで運んでくるのだ。

 取り付いた岩肌や船底から燃料として利用しているのでは。
この急速な変化の原因はどこにあるか。
学者たちは毎日のように頭を捻らせている。
しかし未だに答えは出ないままだ。
炎弾からの防護だけでも困難な上、
たとえ燃料切れに見えても最後の1発を残している。
フジツボルケーノたちは解析を拒むように最適なタイミングで動いていた。

 フジツボルケーノの生息域が広がるごとに、水温が上昇し、時には雨を雲に戻すことさえあった。
クリオネが住む氷の下は狭くなり、
水位の上昇により海抜の表記が日毎に更新を求める。
沖ノ鳥島が水没して経済が傾き、
ハワイが観光どころではなくなった。
イタリアの船守のいくつかは廃業し、いくつかは装いを新たにする決意を固めた。
もちろん、計画と同時にフジツボルケーノも増えていくのだが。

 ついにフジツボルケーノが地球を支配した。
炎と水を自在に操る特性は人間の文明にも等しく、
上回るはずの人間文明にとっては強大な大自然そのものだった。
指向性を持った不自然な大自然が文明を破壊し、
生物対生物の土俵になればもはやフジツボルケーノの敵ではない。
名実ともに正義となった炎弾によって移動能力も得た。
陸地に適応した最初のフジツボルケーノは、
旧来の海に似た環境を陸地の中に作り出し、
さらに適応度の高い次世代を育む最前線となった。
間近に目撃した人は、山のように大きなフジツボだと言う。
文字通り山なのだ。
あの山に登ると喰われてしまうよ。
悪い子はあの山に連れて行っちゃうよ。
いつしか昔話の常連にさえなった。

 フジツボの歴史はやがて、禁断の果実を食べた日として誰もが知ることになる。
巨大化したフジヤマツボ(フジツボの言葉で"王族の宮殿"を意味する)の一部は、
広大なフロンティア・宇宙へと旅立った。
非常食にもなる、巨大な岩肌を宇宙船として。