にんにくガーリック

元気に小説を書きます。水曜日のお昼ごろ更新の予定。このブログの内容は、特別な記載がない限りフィクションです。

カントリーマアムを食べる

 棚の中に待つ暗黒、その狭い入り口を手で弄り、
無雑作に織りなす触感のひとつ、
その一部を2本の指で捕らえた。
白日の元に晒された小袋を持ち去り、
私の特等席へと運び出す。

赤色の袋、不確かな色覚が赤として知る色をまずは目で楽しむ。
象牙色の飾り文字を読み終えると、
片隅にてこの手を求める艶かしい箇所へといよいよ慈悲を向ける。

 両手の、それぞれ人差し指と親指でそっと力を込めると、
封を放たれ本体が露出し、クチュリと音が聴覚へと教える。
次には嗅覚へと、そして視覚をも誘惑する小さな花弁を、
優しく押し出すよう明るみに出す。
滑らかな曲線、間近で目を凝らすと不気味とも思える果実は、
しかし嫌悪を廃して惹きつける。

 果実をさらに口で引き出す。
唇を重ねて歯から守り、形をそのままに引きずり出した。
間近から鼻への誘惑に包まれながら、
お互いのベスト・ポジションへと身を移す。
いよいよ、私には僅かな力を込めるだけで果実は崩れ、
強固な外皮の下から、柔らかな幸福が溢れ出した。
初めは舌先の一点に、瞬きの頃には半身に、再び開く頃には全身に。
電流と等しく駆け巡る甘い幸福を、
最後のひと雫まで味わった。

 そして余韻に浸る間は頭から隠れていた、
主人を失った袋を帰るべき場所へと送り出すのだった。