にんにくガーリック

元気に小説を書きます。水曜日のお昼ごろ更新の予定。このブログの内容は、特別な記載がない限りフィクションです。

固有の超能力で争い以外をする話

固有の超能力で争い以外をする話

 目覚まし時計が騒ぎ出す。
たかし小学3年生は目覚まし時計に屈せず眠ろうと頭まで布団で覆う。
が、母親の参戦により布団を失い、あえなく起きるのだった。


 コーンフレークと牛乳の朝食を済ませて、
会話もそこそこにランドセルを背負う。

「行ってきます!」
パジャマの時とは別人のように元気な声。

何かしらのトラブルに巻き込まれ、乗り越える。
そんな想像をしながら学校へ向かうのだ。
今日はその想像にもうひと味、超能力を加えてみた。
前日の夜、超能力を題材にしたテレビ番組を見たのだ。

 

 通学路の横断歩道、遠くに点滅する青信号を見て、歩きを遅くした。
既に渡り終えた人を見送って、1人で次の青信号を待つ。


この道を通る友人は少ないが、それでも1人だけになるのは珍しい。
特に親友ひろしとも落ち合わないことは1年ぶりとなる。
元気ならいいけど、どうだろう。


 その心配は杞憂となった。
「おはようたかし、こっち来て見てみろよ」
後ろから親友ひろしの声に呼ばれ駆け寄る。

「おはよう、この花がどうしたの?」
道端に咲く花を見ながら、他に見るようなものもなく言った。

「ええと、まあこれは花だけど‥‥」
珍しくしどろもどろとしているひろしを見て、
しかし覚えた違和感への答えはまだない。


「よくわからんけど、帰りにまた来よう。今はもう行くぞ」
たかしは先に歩きだす。

「待って! あと」
言葉の続きをかき消す音。
たかしの眼前で、トラックが横たわり、煙を吹く。
自動販売機が歪み、普段は見ることのない内側の鈍色を見せていた。

たかしにとって、その場所にはもうひとつ、特別な意味がある。
少し前まで信号待ちで立っていた場所。
ひろしに呼ばれなければ、そのまま立っていた場所。


 ひろしが口を開く。
「実は知ってたんだ。今のトラック」


たかしは返事をしない。
救急車のサイレンが小さく聞こえてきた。

「今朝から少しだけ、未来予知ができて、
巻き込まれないように、こうして」

「ひろし」

詰まりながらの言葉を一言で遮って、
「ありがとう。‥‥助かった」
突飛な未来予知の話を、たかしは疑いではなく、感謝で答えた。


 その後は何事もない日乗に戻り、小学校に着いて授業が始まる。
たかしは上の空で、未来予知について考えていた。
そんな能力を持ったら、ひろしならきっと、
人助けをするために使うだろうな。
それは予想でもあり、願望でもある。


 たかしも目覚めた。
ひろしは20年後、自衛隊として活躍し、
迅速な判断で高速バスの乗客全員の命を救い、表彰もされることになる。
それが本当とは、まだ誰も知らない。