にんにくガーリック

元気に小説を書きます。水曜日のお昼ごろ更新の予定。このブログの内容は、特別な記載がない限りフィクションです。

仲良しトリオの女子会 ヘテロとビアンと、これから知る者

仲良しトリオの女子会 ヘテロとビアンと、これから知る者


 第4日曜日の、午後1時30分。
3杯のパフェを並べ写真に収めて、女子会の本番が始まる。
「今月もがんばりましたの会、乾杯っ」
客入りのまばらな時間帯なので、控えめな挨拶。
そしてスプーンがパフェに向かう前、
リーダー格のしっかり者、馬場千穂が口を開く。
「アッコ、いきなりだけど、彼と何かあった?」


 最初から話を振られて、相田藍子は手を止める。
取りかけのブラウニーをグラスの上で待たせて言葉を選ぶ中、
千穂の目線は爪に向かう。
見間違いではない、短く揃えた薄いピンク。
直近に会った時の、輝く赤のマニキュアをやめた、とあっては
先に聞かずにはいられなかった。
藍子が返事を選び終え、ひと呼吸してから返す。

「別れ話をいつ切り出すかってとこ、かな」
「ありゃま、大変そうに」


決して深刻にはしない、深入りもしない。
派手に目立つのは服装だけで、行動は慎重に。
藍子はそんな千穂を信頼し、
だからこそ話させてもらうばかりではいけない。
そう考えて、言葉を出しやすい返事を選ぶ。


「千穂は、どうなの。前は仲よさそうだったけど」
「そういう話をしようと思ってたけど、今のを聞いてやめた。
今日はアッコが主役の、応援する会にしよ」
千穂が話に集中するつもりの時は、キウイを先に食べる。


「私も賛成」
椎名咲がようやっと言葉を入れる。


「それじゃあ満場一致ということで、好きなだけ愚痴でもなんでも言いなね。全部聞こう」

藍子の相談を2人で受けとめ、3人で知恵を出し合う。
時計はいつの間にか、4時を指していた。


 席が埋まり、周囲の声は会話ではなく雑音として届く。
高校生ほどの、運動服を着たグループが来たのだ。
特徴的な細長い円筒のバッグから、野球部の面々と見えた。


千穂があたりを見回すと、空いている席はふたつと見えない。
「もうこんな時間、今日はお開きにしようか」
3人の中でいちばん気が回るもので、
返事を待たずに立ち上がる。


藍子と咲が追いつく頃には会計を済ませており、
外にも後ろにも人影が見えないもので大袈裟に抱きつく。
「咲ぃー、また置いてけぼりでごめんよぉー!」
「聞くだけで楽しいからいーの。それより千穂も、油断大敵だよ」

返事の前に手を離し、これから入る人とすれ違う。
「ありがと。ちゃんと、油断してないよ」
雄弁な答えだった。


「あたしだけ駅がこっち。それじゃあ、またね」
「またね、元気でね」


 千穂と別れて、藍子と咲が並び、雑踏を歩く。
「千穂、いつも元気だよね」
「そうだね」


「咲には、どう見えてるか聞いてもいい?」
「同じだと思うよ。元気で、頼りになる。引っ張ってくれる人」


駅に近いもので、会話もそこそこに分かれ道へと差し掛かる。
「私は右だよ」
咲はそのまま歩こうとするが、藍子が呼び止めて、手を取る。


「一緒に行ってもいい?」
「いいけど、まだ別れてないあの人は」
「女同士は全部セーフって言ってたからいい」


もう一歩、踏み込む。
「どんなのかこっそり教えてほしい。もしかするとって気がして」


咲は目を丸くして、握る手の上に右手を乗せてゆっくりと答える。
「口説いてるのかな。じゃあ、行こうか。
都合のいいことに、この先はしばらくホテル街だよ」


藍子の顔が赤く、慌てた色になる。
「驚いた? その心境を、後で思い出してみてね。あと、ファミレスはしごでいいかな」
「そうしよう‥‥。夜ごはんを食べながら教わる感じで」
「おっけおっけ」

時刻はまだ午後5時。終電は、11時。