にんにくガーリック

元気に小説を書きます。水曜日のお昼ごろ更新の予定。このブログの内容は、特別な記載がない限りフィクションです。

保安官ジミー、幼少の決意

保安官ジミー、幼少の決意


 銃声ふたつと、短い悲鳴ふたつ。
ベッドの下に隠れるジミーにも届いた。
食事の途中、強盗が押し入る音を聞き、
寝室に隠れるよう言いつけた両親はそのまま入ってこない。
ジミーは届いた音から想像してしまう。
ベッドの下に隙間は片側しかなく、
扉側が見えず音だけが様子を伝える。

 

 寝室の扉が開き、2人分の足音が聞こえる。
大人も入れるほどの隙間、気づかれればおしまいだ。
ジミーは顔が冷たくなるように感じた。
足音とは別の方からさらに銃声ふたつが聞こえると、叫び声とともに2人が倒れた。

「よう強盗ども、保安官がお前らの席を用意してくれてるぞ」
飄々とした男の声。
味方が

「ひと思いに殺せよ、クソ野郎」
「悪いな、無用な殺生は趣味じゃないんだ。お前と違ってな」
乱暴な声は強盗のものだ。
どうやら既に諦めるほどの状態とわかり、
ジミーの恐怖は勢いを落としたが、
続く言葉が悲しみを確実なものとした。
引きずる音が2度にわけて玄関側に向かい、
最後に足音がベッドの前に止まると話し始める。
「聞こえてるか、ギリギリボーイ。
強盗2人組は保安官が連れてった。
奴らのお目当てだったでっかい石も無事だぞ。
シーツの端を見られる前でよかったな」

 

 ジミーは恐る恐るベッドの下から出た。
強盗を撃退したからといって、すぐに信用していいものか、
しかし彼は隠れた場所を見つけても手を出さず、
彼の言うでっかい石を探す様子もない。
ジミーは父が見つけてきた石を、厳重な箱に入れてベッドの脇に置くのを見ていた。
それほど価値のあるものとは知らなかったが、
現に強盗に狙われるほどのようだ。

姿を見ると、声の印象とは違いガタイのいい男だった。
目深に被るメキシカンハットと立派な髭、
そして右手はいつでも銃を抜けるように構えている。
「おじちゃん、こわい‥‥」
ジミーは思わず呟いた。
「まあ、そうだろうな。
自己紹介といこうか。俺はサイモンズ。
お前から見ると、父親の、兄貴の、娘の、旦那だ」
長い関係に驚いたが、まっすぐにサイモンズの目を見る。
「ジミー。6歳。正義の保安官になるのが夢」
ひと呼吸あけて、強く言い足す。
「そして悪い人のせいで悲しむのをなくす」
ジミーの決意が伝わり、サイモンズの目が丸くなる。
「よろしくな、強い子のジミー。これから義父、ジミーから見ると伯父に連絡してくるよ。強盗に襲われたがジミーは無事だったってな」
「待って、サイモンズおじさんはどうして、銃をすぐ抜けるように構えてるの?」
ジミーの質問に、大げさな身振りを交えて答える。
「もし襲われても」
銃を抜いて、構えて止まる。
「撃ち返せる準備をしてあるぞ。
そう見せている奴を襲う無謀者はいないさ」
銃を戻す。
「もし丸腰なら、生きていても傷がもっと増えてただろうな」
ジミーの目が輝くのを見て、短く言い足す。
「準備だけでも、意味があるんだ」

 

2人の目は共に、大物と出会った喜びを浮かべていた。